そう!事業仕分で話題になった「スパコン」の話。事業仕分の対象が概算要求の15%程度というところで、実はもうどこかでプレ選定済みで、スタンスを示すだけっぽく感じるのがちょっと気になるけれど、さりとて第一歩。良いことです。
で。スパコンの議論、いろいろな専門家がそれぞれの切り口で解説していますけれど、視聴者・読者にちゃんと整理・説明できているでしょうか? 何が議論されているのか、できるだけ平易に書いてみました。
まずは2つの見方で整理した方が分かりやすいだろうと思います。
・道具(スパコン)作りに意義がある
・道具(スパコン)を使って何かを作りだすことに意義がある
後者視点だけで見れば国内開発する意味はゼロです、海外から安いの買いましょう。でも、前者視点を考慮しても高すぎる・・。きっと土地代とか、建屋とか、ITゼネコンが多くを持っていき、実は肝心のスパコン開発にどれだけ落ちているかが心配です。仕分けではその辺が議論されて欲しいですね。
左図にアーキテクチャのトレンドと、理研の次世代スパコン、そして長崎大学のスパコンの戦略も書いてみました。
世界のトレンドは「高価な計算専用マシン」から「量産されて安い汎用プロセッサを多数接続したマシン」へ移っています。しかーし、これを追いかけるだけでは「道具作り」としての研究に意味がありませんね。
我らが国産次世代スパコンは当初、NEC+富士通コンビでベクトル・スカラのハイブリッドのはずでしたが、NECが撤退し、富士通による完全スカラとなりました。富士通は世界最速(予定)のプロセッサSPARC64 VIIIfxを持っているので、沢山つなげてみたくなるのも分かります。
一方で長崎大学の沢山のGPUを接続したスパコン。GPUはパソコン用に大量生産されている画像処理向けプロセッサ(ベクトル型)ですから、計算得意でしかも安いと、ナイスアイデアだと思います。
NECはインテルとの共同開発でXeonベースのスパコンを作るそう。奇しくも日本の技術のレベルは高いことがインテルによって確認できました。技術者の皆さん!予算が出なくとも大丈夫っ! 海外に出れば認めてもらえます! 長崎大の皆さん、つまり日本のスパコンに先は無いということです。
あんなのに仕分けされちゃノーベル賞受賞者も怒るわな。ほんとバカにされてる感じがしてむかつく。
今回痛感したのは研究者・技術者の説明力の不足です。彼女やネット上の識者の意見を見ていますと、明らかに経営・マーケティング的なツールを使って判断していることがわかります。
少なくとも研究者・技術者、あるいは側近の代弁者がそのことを理解しないといつまでたっても平行線です。
ツールを使ってコストの最適化や戦略を考える一方で、お金の流動性と人材や知識の流動性の違いなども指摘して、落とし所を探ればよかったと思います。
予算は今年切って来年は出すってこともできますが、研究をやめちゃうと人材や知識は流出し、復活は難しいと。
本当は、日本の技術力を引っ張るために一定期間は研究費は出すけれど、やがてその後は自分で維持できるようなビジネスモデル構築の手伝いまでやってあげることでしょうね、難しいけれど。
民主党をはめるために。
そうか、今回は研究者がプレゼンするのではありませんでしたね。
あと、色々な見方があると思いますが、2点気になったことがあったので・・・
>きっと土地代とか、建屋とか、ITゼネコンが多くを持っていき、実は肝心のスパコン開発にどれだけ落ちているかが心配です。
プロセッサや基盤の試作品を開発するにはロットあたりうん億円かかるので、特にどこかに流れていったわけではないと思います。むしろ大赤字の予感。
IntelのCPUが安いのは量産段階で数が出てるので研究費が償却できるからです。
>後者視点だけで見れば国内開発する意味はゼロです、海外から安いの買いましょう。
一般レベルならそれで良いと思いますが、トップエンドとなると話は別になります。
スパコンは性格上、軍事・防衛や最先端医療などに絡むので、自国(Intelの場合はアメリカ)に競合するレベルのものは売ってもらえない可能性があります。
近い例としては戦闘機で、F-22はそのままではもちろん、劣化版ですらメチャクチャに上乗せした額が提示されています。
> プロセッサや基盤の試作品を開発するにはロットあたり
> うん億円かかるので、特にどこかに流れていったわけでは
> ないと思います。
同半導体業界に身を置くものとして45nmの8コア、またSPARCのハイエンド製品としての出荷数を考えますと、開発費用は高額であろうと認識しています。
一方で、予算として計上されている額は267億円です。以下のURLにある建屋なども予算に含まれているという理解なのですが、予算のうち、純粋に計算機部分にさかれる予算はどれだけなのかという疑問を抱くとともに、海外製スパコンの値段と267億円が直接比べられているのに違和感を感じています。
http://www.nsc.riken.jp/site/site.html
> スパコンは性格上、軍事・防衛や最先端医療などに
> 絡むので、自国(Intelの場合はアメリカ)に
> 競合するレベルのものは売ってもらえない
> 可能性があります。
はい、あり得ると思います。
私の文章中では前者の立ち位置、「道具作りに意味がある」部分に該当します。その切り口では、お金をかけてでも自力で開発すべきと思います。
一方でそれはそれでリスクとして理解・許容し、今の実を取るというのも十分とりえる考え方だと思います。後者の立ち位置。
私の論旨としては、
■ この話はとる立場、目的によって2つの意見が出ると思うが、ごっちゃになって議論されている。クリアにしたほうがよい。
■私は「道具作り(技術力保持)の意味でスパコンにお金を出すべき」を支持。しかし、267億円という予算に対して、箱モノにお金が回りすぎていないか? 計算機に十分予算をさかれているのか心配。
■このような説明を質問者と同じようなツールを使って説明すべきだったのでは?
というものでした。